Q1 漢方薬は効きますか?
Q2 漢方薬には高いイメージがありますが、どのくらい費用が掛かりますか?
Q4 どくだみ・はとむぎ・ゲンノショウコ・ハブ茶などと、漢方薬の違いは?
Q9 漢方薬は長く服用するイメージですが、どのくらい続けるのでしょうか?
Q1 漢方薬は効きますか?
効果はありますが、すべての病気や症状に漢方薬が有効というわけではありません。
例えば、肺炎などの感染症・高熱・喘息の発作・脳梗塞・心筋梗塞・狭心症・交通事故などでは、漢方薬ではなく、抗生物質・解熱鎮痛剤・気管支拡張剤・ステロイド剤・血栓溶解剤・止血剤などの医薬品が使用されます。
西洋医学が発展した現在では、漢方薬は急性の病気や症状の治療よりも、アトピーや頑固な皮膚病、不妊症や生理不順、冷え症や貧血、更年期障害、自律神経失調症、便秘、胃腸虚弱、感染症に罹りやすいなどの慢性的な疾患の改善に使われることが多くなっています。
Q2 漢方薬には高いイメージがありますが、どのくらい費用が掛かりますか?
料理に松・竹・梅などのグレードがあるように、同じ処方名の漢方薬でも使われている生薬の品質や部位、配合量などによって価格が異なります。
当店では、1ヶ月12,000~15,000円ぐらいの予算の方が多いです。(1日分:400~500円ぐらい)
Q3 漢方薬は、どのように選んだらよいのでしょうか?
テレビや健康誌などを見て漢方薬を選ぶ方がおられますが、体質や症状に合ったものを選ばないと、漢方薬が逆効果になる場合もあります。
例えば、不妊症に当帰芍薬散や桂枝茯苓丸を勧めている本が見られますが本来、当帰芍薬散は水毒傾向のある虚証タイプの方の妊娠中の腹痛やむくみなどに、桂枝茯苓丸は中間からやや実証タイプの於血の症状を取り除く場合に用いられる漢方薬です。それら基本的な前提条件を無視して、症状だけを目安に漢方薬を選択すると、やはり副作用は出やすくなります。
つまり、漢方薬に副作用がないのではなく、その方の体質・症状に考慮して副作用が出ないように処方しているのです。しっかり経験を積んだ専門家にじっくり相談して、身体に合った漢方薬を処方してもらいましょう。
Q4 どくだみ・はとむぎ・ゲンノショウコ・ハブ茶などと、漢方薬の違いは?
どくだみ・はとむぎ・ゲンノショウコ・ハブ茶などは漢方薬ではなく、民間薬に分類されます。民間薬は単一の薬草を用いるだけですが、漢方薬は長い経験から生まれた理論に基づき、いくつかの生薬を効果的に配合して使用します。
例えば、下痢の場合、民間薬ではゲンノショウコを用いますが、漢方では体質や症状に合わせて漢方薬を使い分けます。冷え性で消化吸収の悪い方の慢性的な下痢には、胃腸を温め、消化吸収を助ける働きを持つ朝鮮人参などの生薬がいくつか配合された漢方薬を使います。また、急性の下痢や食あたりには、抗菌作用や抗炎症作用のある黄連などの生薬が配合された漢方薬を使います。
※漢方では、相乗効果が出るように、いくつかの生薬を組み合わせて使用するのが基本です。
Q5 病院の漢方薬と薬局の漢方薬との違いは?
薬の名前が同じでも、病院で処方される漢方薬と薬局で販売されている漢方薬では、品質に差があることがあります。
なぜなら、健康保険に採用されている漢方薬は、構成する生薬の値段が上昇しても価格に転化することが難しく、品質を加減しなければならないことがあるからです。
また、健康保険に採用されている漢方薬の品目はそれほど多くはありません。数ある漢方薬の種類のほんの一部だけです。
そのため、日本の病院では、風邪には葛根湯 、肝臓病なら小柴胡湯、不妊症や生理不順には当帰芍薬散、子宮筋腫や子宮内膜症なら桂枝茯苓丸というふうに病名に合わせて、漢方薬を選ぶケースが多いのです。しかし、薬局で販売されている漢方薬の場合、健康保険の適用対象にはなりませんが、幅広い種類の漢方薬の中から、その方の症状や体質に最適な漢方薬を自由に選択することが可能です。
Q6 漢方薬は、どのような病気に効果的なのでしょうか?
漢方薬は、風邪薬や胃腸薬、便秘薬などに使われることも多くなってきています。しかし本来、漢方薬はアトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー体質の改善、不妊症や生理不順、更年期障害などの婦人科系の疾患、胃腸虚弱や慢性病などの体質改善が得意な分野です。治療の概念が異なるため、西洋医学的な治療で思わしくない場合でも、思わぬ効き目が得られることがあります。
【補足】 現代医学すなわち西洋医学の起源は、フランスの科学者 ルイ・パスツールが微生物が病原体である可能性を示唆したことに始まります。そのため、病気治療の目的が病原菌や悪い箇所を特定し、それらを直接、殺菌したり除去することを基本にしています。しかし、東洋医学の場合はそういうことは苦手で、身体のバランスを整えることで、病気に負けない身体作りを間接的に推し進めていきます。つまり、西洋医学と東洋医学の間には互いの欠点を補い合う、補完関係があるとも云えます。
Q7 漢方薬に副作用はありますか? その1
漢方薬そのものが原因と考えられる場合
風邪の漢方薬としてよく知られている葛根湯は、眠くならないから安心だと思われています。しかし、それは見当違いです。葛根湯が眠くならないのは、主成分 麻黄に含まれるエフェドリンが中枢神経を興奮させるからです。
高血圧・心機能に問題がある・不眠・向精神薬を服用している場合など、麻黄が配合された漢方薬は要注意です。血圧が高くなる・動悸がする・眠れない・イライラするなどの症状が現われます。しかし、それは副作用ではなく、漢方薬の選び方を間違えたということです。つまり、漢方薬に副作用がないというわけではなく、症状や体質に応じて薬を使い分けることで、副作用が起こらないようにしているわけです。
麻黄に含有されるエフェドリンは覚醒剤の原料です。小青竜湯・麻黄湯・防風通聖散・麻黄附子細辛湯などの漢方薬にも麻黄は配合されています。
Q8 漢方薬に副作用はありますか? その2
漢方薬に配合される生薬が原因と考えられる場合
●地黄 … 食欲不振、胃痛、下痢などの胃腸障害
代表的処方:八味地黄丸 六味地黄丸 牛車腎気丸 十全大補湯など
●甘草 … 血圧上昇、下肢の浮腫、低カリウム血症に伴う脱力感など
代表的処方:芍薬甘草湯 甘草湯 甘麦大棗湯 桔梗湯 半夏瀉心湯 小青竜湯など
※漢方薬の約7割に甘草が配合されています。甘草による低カリウム血症は、ナトリウムの再吸収とカリウムの排泄を促進するためといわれています。甘草の1日量の上限は7.5gで、甘草湯(8g)や芍薬甘草湯(6g)、甘麦大棗湯(5g)などは、特に含有量が多いので注意が必要です。また、抑肝散に配合される甘草の1日量は1.5gですが、低カリウム血症を起こすケースが多く報告されています。
●麻黄 … 血圧上昇、頻脈、動悸、不眠、興奮、発汗、食欲減退、全身の脱力感など
代表的処方:麻黄湯 麻黄附子細辛湯 葛根湯 小青竜湯 防風通聖散など
●黄芩 … 肝機能障害、間質性肺炎
代表的処方:大柴胡湯 小柴胡湯 柴苓湯 黄連解毒湯 防風通聖散など
※以前、小柴胡湯による間質性肺炎が大きな問題になった。
●山梔子 … 長期連用による特発性腸間膜静脈硬化症
代表的処方:加味逍遥散 茵陳蒿湯 黄連解毒湯 辛夷清肺湯など
●附子 … 動悸、のぼせ、舌のしびれなど
代表的処方:八味地黄丸 牛車腎気丸 麻黄附子細辛湯 真武湯など
●大黄 … 下痢、腹痛、吐き気、皮膚の発疹・発赤・かゆみなど
代表的処方:大黄甘草湯 防風通聖散 桃核承気湯など
Q9 漢方薬は長く服用するイメージですが、どのくらい続けるのでしょうか?
一般論としてお話しすれば、急性では1~2週間程度、慢性では3ヶ月以上が目安になると考えて下さい。しかし厳密に言えば、その方の病気や症状、体質、生活習慣などによって服用期間には差が出ます。慢性病はそれまでの生活が積み上げられた結果です。生活の問題点も改善しなければ、いくら高い漢方薬を服用しても病気はよくなりません。
また、慢性病に漢方薬を使う場合、半月単位で処方を変更するよりも、病気や症状の本質をじっくり見据えて漢方薬を選び、その方に合った養生法を併せてアドバイスしたほうが結果は出ます。症状や体質が同じでも、北海道と九州の方、30代と50代の方というように生活環境や年齢が違えばアドバイスの内容も変わります。
Q10 漢方薬の服用を急に中止しても大丈夫ですか?
余程のことがない限り、大丈夫だと思います。漢方薬では、ステロイド剤やホルモン剤の離脱作用のような極端なことはほとんど生じません。しかし、症状が治りきっていない場合などでは症状が再度、ぶり返す可能性もありますので、少しずつ減量しながら様子を見たほうがよろしいでしょう。
Q11 病院などの薬と漢方薬を併用しても大丈夫でしょうか?
もちろん、大丈夫な場合とそうでない場合があります。虎ノ門漢方堂では、薬局薬剤師指導者(財団法人 日本薬剤師研修センター)の資格を持つ、漢方薬だけでなく、病院の薬にも詳しい薬剤師が対応いたしますので、ご安心下さい。
Q12 漢方薬とは、どのようなものですか?
漢方薬は、中医学(中国で発展した医学)の一部を遣唐使や遣隋使が持ち帰ったものが始まりです。しかし、それらの派遣制度が途絶えたため、漢方薬は唐や隋の時代までの古い処方がほとんどです。
そのため、日本で使われている漢方薬は現代の日本人の体質や生活環境にそぐわない場合も多く、効果が表われにくいことが大きな問題となってきています。
現在の中国で使われている漢方薬と日本で使われている漢方薬には、長短を含めて大きな隔たりがあります。※東洋医学=漢方と思われている方が多いですが、東洋医学>中医学・アーユルヴェーダ>漢方・韓方の関係です。残念ながら、東洋医学=漢方ではありません。
Q13 漢方薬は煎じ薬以外に、どのような種類がありますか?
漢方薬は煎じて飲むものと思われていますが、現在では製薬メーカーで加工された漢方エキス剤が主流です。錠剤や顆粒、シロップなど、手軽に服用できる形で市販されています。
しかし、漢方薬の主成分が非常に水に溶けにくい場合などはエキス剤でなく、昔ながらの製法で丸薬や散剤の形に加工されていることもあります。
Q14 漢方薬を購入する際、注意すべき点はありますか?
テレビや健康雑誌、インターネットなどでも多くの漢方薬が紹介されています。しかし、食べログ問題などのように情報が正確でない場合も多く、注意が必要です。
また、健康食品やサプリだけでなく、漢方薬の場合も海外製品によるトラブルが増えています。例えば、個人輸入した漢方薬に未承認医薬品や表示外成分が配合されていて、健康被害に遭遇した場合も自己責任で対処しなければなりません。特に怖いのが覚せい剤など、法律で使用が禁止されている薬物が混入していた場合です。販売者だけでなく、購入者側にも厳罰が課されます。
虎ノ門漢方堂アドバイザースタッフ
城戸常雄 医学博士(京都大学医学部卒、元アメリカ国立衛生研究所)
城戸宏美 看護師・登録販売者(福井県立大学卒、元福井大学医学部付属病院)