先日のコラムで、「酸を中和してくれるアルカリ分が下痢で大量に失われたりすると、酸性の度合いが強まって人体に支障をきたすようになる」という話を致しましたが、酸を中和してくれるアルカリ分とは実は、“腸液”のことを意味しております。
腸液とは、小腸壁にある腸腺から分泌される消化液の総称で、炭水化物分解酵素であるマルターゼ・サッカラーゼ・ラクターゼ、タンパク質分解酵素であるアミノペプチダーゼ・ジペプチダーゼなど、多くの消化酵素が中に含まれています。
毎日、かなりの量の腸液が分泌されていますから、よほどひどい下痢が続かない限り、腸内環境に大きな変化が現われるようなことはありませんが、一般に使用されている浣腸で思わぬ事態が簡単に発生する場合があります。
なぜなら、浣腸の瀉下作用は意外と強力で、人によって腸液と体液が急激かつ大量に失われることがあるからです。例えば、心疾患の患者さんでは心臓が停止する危険性が出てきますし、小児や老人では重篤な脱水症状に陥る可能性があります。
また、浣腸の中身はグリセリンで安全性が非常に高いと一般には考えられていますが、肛門や腸管に炎症・キズがある場合に浣腸を使用しますと、グリセリンが創傷部位より血管の中へと吸収されて溶血または腎不全を引き起こす恐れがあります。痔主の方は、くれぐれもご注意下さい。
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◆城戸宏美◆ プロフィール
元福井大学医学部付属病院看護師・登録販売者
(福井県立大学・武生高校卒)
◆虎ノ門漢方堂◆
〒915-0813 福井県越前市京町3-1-26
TEL 0778-22-2371
◆ この東洋医学のコラムは、虎ノ門漢方堂の薬剤師 城戸克治が、直木賞作家 邱永漢さんの依頼を受け、ほぼ日刊イトイ新聞の分家サイト「ハイハイQさん」に約3年間に渡り連載した医師/薬剤師向けの「中医学事始め」を一般の方向けにわかりやすく解説したものです。
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