25年ほど前に爆発的なブームを引き起こした商品が二つあったという話を先日、このコラムで取り上げました。一つがビタミンEで、残る一つが現在また、ブームになっている「黒酢」です。

当時、「あるある大辞典」や「おもいっきりテレビ」などの大掛かりな健康娯楽番組はほとんどなく、黒酢のブームは多くの体験談を掲載したいわゆるバイブル本によって作られました。

その中で一番、悪質だった会社は「酢は身体にいい」という先入観を巧みに利用し、黒酢や電解カルシウムを飲んでアレルギー性鼻炎(現在でいえば花粉症)、アトピー性皮膚炎、喘息が治ったというおおげさな体験談を多数でっち上げたり、各地で講演会を毎日のように開催し医学博士の肩書きを持った人たちにもっともらしい無責任な解説を話させたりして、患者さんに何十万円分もの商品を買わせる巧妙なシステムを作り上げていました。

また、当時は現在のように通販システムが発達していなかったため、この会社は全国の薬局・薬店を組織化し販売ルートを構築していましたが、全国各地でいろいろな問題を起こし続け、とうとう最後には国会でも取り上げられるほどの大きな事件にまで発展してしまいました。

“水に流す”ことは日本では美徳の風習とされていますが、他の国々においてはそうでない場合のほうが多いものです。当時の騒ぎを知るものとしては、いくら巧妙に形を変えても、大きな社会問題まで引き起こした黒酢とバイブル商法の関係を水を流すように見過ごすことはできません。

皆さん、落ち着いてよく考えてみましょう。酢はあくまで調味料の一種で、米やパンなどの主食ではありません。また、しょう油やソースにだって、黒酢に含まれているような量の天然アミノ酸は何種類も含まれているのです。

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◆城戸宏美◆ プロフィール
元福井大学医学部付属病院看護師・登録販売者
(福井県立大学・武生高校卒)

◆虎ノ門漢方堂◆
〒915-0813 福井県越前市京町3-1-26
TEL 0778-22-2371



◆ この東洋医学のコラムは、虎ノ門漢方堂の薬剤師 城戸克治が、直木賞作家 邱永漢さんの依頼を受け、ほぼ日刊イトイ新聞の分家サイト「ハイハイQさん」に約3年間に渡り連載した医師/薬剤師向けの「中医学事始め」を一般の方向けにわかりやすく解説したものです。

※この記事の著者、城戸克治のプロフィールはこちら