「医食同源」とか「薬食同源」といった文字をこの頃、中華料理店の店先などでよく見かけることがあります。医食同源は、昭和の始めに日本人が作り出したネーミングで、薬食同源のほうは
昔から中国でも使われてきた言葉です。

しかし、漢方薬に用いられる多くの生薬が、桂皮はシナモン、生姜はジンジャー、茴香はフェンネルなどというようにスパイスとしての別名を持っていることを考えれば、医食同源というよりも薬食同源という言葉のほうがやはり本来の意味が伝わるような気がします。

また、ショウガ科の植物の地下茎を乾燥させた“ターメリック”というカレーの色づけに用いる香辛料がありますが、生薬名は鬱金(ウコン)といい、カレーで有名なハウス食品の前身も実はこうした漢方生薬専門の薬問屋でした。

いわば、何気なく香辛料として使われている生薬の種類は思いのほか多く、ほとんどのスパイスが生薬として通用する可能性があるといっても過言ではないのかも知れません。

さらに、私たちの日常生活を振り返ってみると、一般に利用している食べ物の中に薬効を持つ食品が潜んでいる場合も意外とけっこう多いものです。例えば、お寿司屋さんでワサビや生姜、酢を使うのは、もちろん食欲を増進させてたくさん食べさせるという意味もありますが、本来の目的は殺菌効果や防腐作用を期待してのことです。また、魚屋さんで刺身の横に紫蘇(しそ)の葉が添えてあるのは、紫蘇の葉には魚の毒を消す働きがあるからです。

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◆城戸宏美◆ プロフィール
元福井大学医学部付属病院看護師・登録販売者
(福井県立大学・武生高校卒)

◆虎ノ門漢方堂◆
〒915-0813 福井県越前市京町3-1-26
TEL 0778-22-2371



◆ この東洋医学のコラムは、虎ノ門漢方堂の薬剤師 城戸克治が、直木賞作家 邱永漢さんの依頼を受け、ほぼ日刊イトイ新聞の分家サイト「ハイハイQさん」に約3年間に渡り連載した医師/薬剤師向けの「中医学事始め」を一般の方向けにわかりやすく解説したものです。

※この記事の著者、城戸克治のプロフィールはこちら