痔は、腰痛と同様に、人間が2本足で歩行するようになった結果生まれた、人間に特有の病気です。

牛や馬、羊など4本足の動物が、痔や腰痛に掛かることはまずありません。なぜなら、上半身も下半身も同じような高さの位置にあるため、肛門部が圧迫されたり腰に全体重が架かることがないからです。

つまり、人間は2本足で歩いて手を使うことができるように進化しましたが、同時に、いくつかの肉体的負担を背負わなければならなくなったともいえます。

しかし、何といっても人間が痔にかかりやすいのは、身体的構造に1つの大きな欠陥があるからです。

通常の場合、人間の静脈には血液の逆流を防ぐための弁が付いていますが、肝臓から下の肛門部周辺の静脈の血管には、どういうわけか逆流を防ぐはずの弁が付いておりません。

そのため、血液は逆流しやすく、滞留した状態が絶えず発生しています。この鬱血が血管の腫脹を招き、外痔核や内痔核、裂肛、脱肛などいわゆる痔の状態を引き起こしてしまうのです。

つまり、煎じ詰めれば、痔の根本的原因は血液の流れの停滞にあるわけで、いくら外用剤の軟膏や坐薬を使っても、それは対症療法にしか過ぎず根本的な解決には至らないということなのです。

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◆城戸宏美◆ プロフィール
元福井大学医学部付属病院看護師・登録販売者
(福井県立大学・武生高校卒)

◆虎ノ門漢方堂◆
〒915-0813 福井県越前市京町3-1-26
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◆ この東洋医学のコラムは、虎ノ門漢方堂の薬剤師 城戸克治が、直木賞作家 邱永漢さんの依頼を受け、ほぼ日刊イトイ新聞の分家サイト「ハイハイQさん」に約3年間に渡り連載した医師/薬剤師向けの「中医学事始め」を一般の方向けにわかりやすく解説したものです。

※この記事の著者、城戸克治のプロフィールはこちら