大学の医学部を卒業したばかりの研修医では、国家試験程度の知識は持っていても薬の名前もほとんど知らないし、患者さんに注射をした経験もありませんから、実務能力においては多分、偽医者以下かも知れません。
しかし、周囲のスタッフが協力してフォローしてくれているから、どうにか仕事をすることができるのです。大学病院などで、新米の医師がベテランの婦長さんや看護婦さんたちに頭が上がらないという話をよく耳にしますが、それは主にこうした理由があるからで、通常の場合、この状態は数年間は続きます。
医者はこのように、他に比べて一人前になるのにかなりの時間を要する職業なのですが、それはまた、医療関係の仕事全般にも大体、当てはまることです。
例えば、看護師さんだって、実地研修もせずにいきなり注射が打てるわけがないですし、手術の助手がつとまるはずもありません。看護師さんが注射を打ったり手術の助手ができるようになるには、それなりの医学的知識の他にある程度の実地研修が絶対に必要なのです。
ガンの手術だって、「悪い部分だけを切り取ればよい」と単純に思いがちですが、それは悪くない部分を如何にして残すかという命題も意味しているわけですから、そんなに簡単なことではありません。
インターネットやパソコンの場合でもそうですが、本だけで勉強しているのと実際に実行してみるのとでは、どうしても食い違いや差が出てきます。
Q先生が、机上の空論よりも、失敗してでもいいから実行することの大切さをよく説かれておられますが、私にも、その大切さはたいへんよく分かります。
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◆城戸宏美◆ プロフィール
元福井大学医学部付属病院看護師・登録販売者
(福井県立大学・武生高校卒)
◆虎ノ門漢方堂◆
〒915-0813 福井県越前市京町3-1-26
TEL 0778-22-2371
◆ この東洋医学のコラムは、虎ノ門漢方堂の薬剤師 城戸克治が、直木賞作家 邱永漢さんの依頼を受け、ほぼ日刊イトイ新聞の分家サイト「ハイハイQさん」に約3年間に渡り連載した医師/薬剤師向けの「中医学事始め」を一般の方向けにわかりやすく解説したものです。
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