以前、病院の院長の「内縁の妻」が、東大卒の医師と偽って無資格で診療行為をしていたとして医師法違反(無資格診療)の罪に問われ、院長ともども逮捕された事件がありました。

そのときの報道によれば、彼女は病院の開業当時からずっと内科の診療部門を担当しており、10年間以上も約20人の同僚医師や看護師たちは、彼女が偽医師であることにまったく気づかなかったそうです。

人手が足りなかったから院長が内縁の妻にやらせていたのか、彼女自身の要望でやっていたのか、そのへんの事情は不明ですが、現在の複雑な医療の仕組みの中で、10年以上も医者として勤めさせていたとは考えてみれば非常に物騒な話です。

また、大体の場合において、偽医者になりすますほうの人間がある程度の経験を積んだ医療関係者だという話はよく聞きましたが、今回のように、騙される側に医療関係者が何人も含まれていたケースはいままであまり聞いたことがありません。

いくら手術や専門的処置が必要でない内科とはいえ、10年以上もプロの連中を欺き続けるのは至難の業で、極端なことを言わせてもらえれば、夫の指導がよほど上手だったのか、周囲がよほど鈍かったのか、どちらかでしょう。

※ちなみに、彼女への患者さんの評判は「やさしくて、名医」だったそうです。

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◆城戸宏美◆ プロフィール
元福井大学医学部付属病院看護師・登録販売者
(福井県立大学・武生高校卒)

◆虎ノ門漢方堂◆
〒915-0813 福井県越前市京町3-1-26
TEL 0778-22-2371



◆ この東洋医学のコラムは、虎ノ門漢方堂の薬剤師 城戸克治が、直木賞作家 邱永漢さんの依頼を受け、ほぼ日刊イトイ新聞の分家サイト「ハイハイQさん」に約3年間に渡り連載した医師/薬剤師向けの「中医学事始め」を一般の方向けにわかりやすく解説したものです。

※この記事の著者、城戸克治のプロフィールはこちら