ガンが患者を死に至らしめるのは、ほとんどの場合が転移によるものです。転移したガン細胞が脳や肺・肝臓・骨などの重要な部分に転移増殖して致命的なダメージを身体に与えます。

もし、ガン細胞が転移せずに局所的な部分にとどまっていれば、いくら大きくなったとしてもそれほど怖い病気ではありません。

また、抗ガン剤や放射線などでガン細胞が縮小したという話もよく聞きますが、いくら腫瘍自体が小さくなっても転移を防がなくてはいずれ大事に至ります。

しかし、転移に関する研究は大変に手間がかかり複雑で国などからの助成金も下りにくいため、ほとんどの研究者は研究のテーマには選びません。新薬の承認でも同様に、ガン細胞を縮小する薬のほうが臨床試験も行ないやすく認可もされやすいため、製薬会社もそちらのほうに力を注いでいます。

しかし、よく考えてみれば、現在のように外科手術が比較的安全に行なえる時代では、ガンが患者を死に至らしめる原因の多くはガン細胞が転移するためであって、腫瘍が大きくなることではありません。

極端な言い方をすれば、転移さえしなければガンはイボやポリープと同じようなものです。別に放って置いても構わないし、大きくなって邪魔になれば切り取ってしまえばよいだけの話です。

これまで30年間、間違いないとアメリカで思われてきたガンに対する研究は、腫瘍を小さくすることから転移を防ぐことへとどうやら変わりつつあります。

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◆城戸宏美◆ プロフィール
元福井大学医学部付属病院看護師・登録販売者
(福井県立大学・武生高校卒)

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※ この記事の著者:主任薬剤師 城戸 克治 プロフィール