第192回 「神様からの贈り物」

サリドマイドは、
日本のほかヨーロッパなどでも
被害児を出しましたが、
驚くべきことにアメリカでは
ほとんど犠牲者を出しませんでした。

何故なら、FDA(米食品医薬品局)
薬剤評価センターの審査官
F.C.ケルシー女史が、
サリドマイドの毒性のデータの不備に
早くから疑問を抱き
継続審査を行なっていたためです。

彼女が資料の不備を指摘し
医薬品として承認しなかったことに対して、
ケネディー大統領から
特別金賞が贈られたのは有名な話で、
FDA(米食品医薬品局)が
今なお世界中から
多くの信頼を得ている所以でもあります。

世界中で多くの犠牲者を出してしまった
サリドマイドですが、
FDAは1998年、
「ハンセン病」に伴う炎症の治療薬として
医薬品の認可を再び与えました。
以前から、サリドマイドが
ハンセン病の炎症の激痛に
非常に有効であることはよく知られており、
闇で高値で取引されているという現実がありました。
そのため、FDAもサリドマイドを
野放しの状態に放置しておくわけにもゆかず、
再承認に踏み切らざるを得なかったのでしょう。

ただし、使用にあたっては
極めて厳しい制限が設けられており、
指定された医師以外の使用は許されませんし、
催奇形の副作用を防止する意味で
女性患者だけでなく
男性にも避妊を義務づけるという
二重のチェックも行なわれております。

しかし、サリドマイドは
敢えてこうした使い方をすることで、
ハンセン病の炎症の
激痛に苦しむ患者さんたちにとって、
「薬としての役目」を
再び果たすことが出来るようになったのです。

このように、
薬物の有効性と安全性を天秤にかけ、
副作用の発現にも最大限の注意を払い、
患者さんがリスクを承知した上で
必要ならば使用するという判断の仕方は、
患者さんの立場においても
十分に納得が行くやり方だと私は思います。

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