第191回 「悪魔の薬」

副作用の問題が一筋縄でいかないのは、いくつかのやっかいな理由があるからです。例えば、副作用が出現するのに、かなりの時間を要したり、本人以外に副作用の影響が出たりする場合もあったりします。

「サリドマイド」という有名な薬は本来、てんかんの薬として開発されたものですが、早く深い眠りにつけるということや副作用が少ない。また、大量に使用しても死亡することがなく睡眠薬による自殺にも使われにくいということで、安全な睡眠薬として病院や薬局でも広く扱われていました。

しかし、販売されて約4年後に、妊娠初期の妊婦が服用した場合に四肢に奇形がある子供が産まれる催奇形性があることがドイツの小児科学会で報告され、サリドマイド含有の医薬品はヨーロッパで全面的に回収となりました。

ところが、日本においては、ドイツでの警告や回収措置を無視して諸外国が回収した後にも販売が続けられ、何と市販の胃腸薬にまで配合されてその被害者は300人以上に拡大してしまったのです。

外国に比べ回収が半年も遅れその間に倍以上の被害者を出してしまったこと、ドイツからの勧告が厚生省と製薬会社に届いたにも関わらず「有用な薬品を回収すれば社会不安を起こす」として販売が続行されたこと、勧告後も厚生省がサリドマイドの製造許可を与えていたこと、回収指示後も在庫の商品が薬局などで売られていたことなど、サリドマイド事件に関する問題点は実に多くあります。

これは今から40年程前の話ですが、「薬物は有効性のみならず、その安全性にも最大限の注意を払わなければならない。また、重大な副作用が見つかった場合、迅速に行動を起こし対処しなくてはいけない!」という教訓は、私たち医療に携わる者はこれからも必ず胆に銘じていかなければなりません。

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