女性は妊娠した場合、お腹の中にいる赤ちゃんにも栄養を送らなくてはいけないため、貧血気味になることが多いものです。こんなとき西洋医学では貧血の治療をすぐに考えがちですが、中医学では少し違った見方をしています。
例えば妊娠時の貧血の場合、西洋医学では赤血球数・ヘモグロビン濃度・ヘマトクリット値などの血液に関する検査値が低くなっていないかを主に調べるのですが、中医学ではそれらの濃度が少々低くても身体全体の血液の量が十分にあればそれほど問題にはしません。
何故なら、妊娠後期に貧血になりやすいということやむくみが出てきやすいということには、中医学的に見て大切な理由があると考えているからです。つまり、あらかじめ体内の水分量を増やしておくことで、お産の時に出血しても大丈夫なように身体を調整しているわけです。
そのため出血の量が多少増えても、血液がうすくなっているので血液中の赤血球・白血球・血小板などの重要な成分が大量に失われることはありません。また、血液が薄いということは血液がサラサラということでもあり、出産の後に発生しやすい血栓症を起こりにくくするという利点もあります。
このように妊娠の場合の貧血は、病院で検査して早急に治療する必要のない程度のものなら、そのまま様子を見てもよいというのが中医学的な考え方なのです。
確か、「失楽園」で有名な渡辺淳一さんのデビュー作の小説でも、女性が男性に比べて出血に対していかに強いということが重要なテーマになっていたと記憶しています。
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◆城戸宏美◆ プロフィール
元福井大学医学部付属病院看護師・登録販売者
(福井県立大学・武生高校卒)
◆虎ノ門漢方堂◆
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◆ この東洋医学のコラムは、虎ノ門漢方堂の薬剤師 城戸克治が、直木賞作家 邱永漢さんの依頼を受け、ほぼ日刊イトイ新聞の分家サイト「ハイハイQさん」に約3年間に渡り連載した医師/薬剤師向けの「中医学事始め」を一般の方向けにわかりやすく解説したものです。
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