ここで中医学の基本となる「陰陽五行説」のことを、「陰陽」と「五行」とに分けて少しお話しておきたいと思います。

中国の古い時代の基本的な考え方の一つである陰陽説とは、「この世に存在するすべての事や物には、その中に必ず性質の反対の二つの要素が対をなして存在しており、それらは別々に分かれて存在する事は出来ず、しかも、それらはお互いに固定された関係ではなく、バランスを取りながら変化している」という考え方です。そして、この対立する二つの要素を「陰」と「陽」という言葉で表わしたのです。※数学では+と-という記号を用い、反対の性質を表わします。

おそらく陰陽説の始まりは、男と女、天と地、火と水、というような二つの対立するものから考えられたものではないでしょうか。この陰陽説に従って世の中を見てみますと、すべての事や物の中に二つの相反する要素を見つけることが出来ます。そして、それらはお互いに関連し合いながら、それらの立場を変化させていきます。

例えば、親と子でいえば、親が無ければ子は生まれないという関係があります。しかし、親は初めから親であったのではなく、そして、子供の方もいつまでも子でいるのではなく、やがては自分の子供が出来、自分は親へと変わっていきます。また、親は子を養います。しかし、やがて親は年老いて子に養われるように、その相互関係は固定的でなく刻々と変化していくわけです。そして、それは「朝があれば夜があり、夜が来ればまた朝が訪れる」というふうに、ずっと永遠に繰り返され続いていくのです。

強い・弱い、多い・少ない、長い・短かい、高い・低い、重い・軽い、早い・遅い、固い・軟らかい、表・裏など。世の中では、こういう相対的な関係をあらゆる所で見つけ出す事が出来ます。

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◆城戸宏美◆ プロフィール
元福井大学医学部付属病院看護師・登録販売者
(福井県立大学・武生高校卒)

◆虎ノ門漢方堂◆
〒915-0813 福井県越前市京町3-1-26
TEL 0778-22-2371



◆ この東洋医学のコラムは、虎ノ門漢方堂の薬剤師 城戸克治が、直木賞作家 邱永漢さんの依頼を受け、ほぼ日刊イトイ新聞の分家サイト「ハイハイQさん」に約3年間に渡り連載した医師/薬剤師向けの「中医学事始め」を一般の方向けにわかりやすく解説したものです。

※この記事の著者、城戸克治のプロフィールはこちら